デジタル・カメラで文書を複写する 12 ― マイクロフィルムのスキャン

フランス(いまはメキシコかな?)の小原くんが、マイクロフィルムのデジタル化に燃えているようです。


マイクロフィルムというのは、保存用に紙媒体の文書をカメラで撮影したものを、ちいさーく縮小して記録したフィルムで、デジタル機器が普及する前は図書館や文書館などでけっこうひろく使われていた媒体です。古い新聞の記事をカシャカシャうごかして画面に映し出すような機械が、ひとむかし前のミステリー・ドラマとかで出てきたでしょ。あれです。


改ざんが難しいとか耐久性にすぐれるとかそういう理由でいまでも支持するひとはいるみたいですが、はっきりいって前世紀の技術です。改ざんが難しいというのは、単価が高くて広く普及しなかったから、図書館や文書館で閉じた管理が可能だったからでしょう。耐久性にすぐれるという主張もありますが(100年〜500年いけるとも。でも、500年前にはマイクロフィルムなんて存在しませんでしたし実証はされてないですけど)、そのための管理にはかなりのお金がかかることも事実。マレーシアのとある大学図書館で保管されているフィルムを閲覧しようとしたとき、暑さと湿気でバリバリに固まってしまった黒い物体を見て愕然としたことがあります。夏が暑い地域ではエアコンをかけっぱなしにして湿度管理をした部屋でないともたないのです。


そもそもマイクロフィルムを読むための機械自体が何十万から何百万円もするような代物なので、どこか機械を持っている機関へのアクセスがないと使えないという、非常に非民主主義的な媒体でもあります。しかし、初期投資さえしっかりできれば、マイクロフィルムのスキャンは自動化できるうえ非常に安価にできるのです(参考:ウィキペディア)。本当はマイクロフィルムのスキャンなんてファンドを政府からとっている研究機関が一括してやるべき仕事だと思います。


情報伝達なんて効率化されればされるほどいいにきまってるんだから、ファンドをとってるひとがさっさとデジタル化してあんなものは早く淘汰してくれればいいと思うんですが(←中二病)、どうも現実にはそうはいかないようです。そのようなわけで、お金がなくてもわたしたちが手作業でコツコツやるしかないという場面もけっこうでてきたりするわけです。わたしも、とある研究所で何日間か泊りがけでスキャンにいそしんだことがあります。もう二度とやりたくないですけど。


そんなわけでグチがすぎましたが、できるなら個人ではやりたかないけど、しかたなくやるしかないマイクロフィルムのスキャンについての情報のまとめです。かかる値段の高い順に紹介します。ほとんど小原くんからの情報ですが*1、おいおい書き足していったりしようかなとも思います(たぶんね)。


スキャン機能付マイクロフィルム・リーダー

いちばんお金のかかる方法。安価なモデルでも本体だけで数十万、それにレンズなどの付属品がかかる。まず普通は個人では手が出ないでしょう。比較的安価なモデルでつぎのようなもの。


マイクロスコープ

医療用・工業用のマイクロスコープと呼ばれる高性能のデジタル顕微鏡があります。コンピュータに接続できるのでそれを通じて画像を取り込んではどうかという小原くんの提案。これは一台13万円くらいから購入できます。もちろん、これを使えばやりたいことはできるでしょう。しかし、マイクロフィルムごときを相手にマイクロスコープとは大仰すぎるかんじがします。そんな高性能のものはまず要りません。拡大が必要だとしてもカメラ用の引き伸ばしレンズで十分でしょう。費用対効果を考えるとあまり得策でない気がします。


試してみたければこのあたりからどうぞ。なお、マイクロフィルム用というよりは、すごく細かい文字の特殊な原資料を読む必要があるときには採用の価値があるかもしれません。100倍くらいの光学ズームができるようです。ただ、マイクロフィルム読み取り専用ならそんな光学ズーム機能は必要ないと思いますが。もともとの写真の質が低ければ、いくら光学ズームで拡大してもダメなものはダメですから。あと、光学ズーム機能がすごすぎる一方で、一般的に解像度はあまり高くないようです。なので、光学ズームをフルに使わずページ一枚分を撮るというのであれば、画質はデジタル・カメラに劣る可能性があります。確認してないのでわかりませんけど。まず、用途が異なるものだということなのでしょう。


ただし、ドライブに軍用車を使うような、あるいはトウフを切るのに日本刀を使うような、そんなのに似た満足感は得られそうな気がします。もし自分のお金があまっていたとして、欲しいか欲しくないかと問われれば、個人的には欲しいと言います。だってカッコいいんですもの。


フィルム・スキャナ

もしうまく改造できれば可能性がありそうな方法。見たところフィルム・スキャナの多くの機種は、写真のネガでは6コマ、スライドで4コマを入れられるホルダーを使うというかたちになっているので、ダラダラと長くつづくマイクロフィルムのリールやシート状のものでは使えないはずです。改造できるかどうかは実物を見てみないとよくわからないですね。つぎに日本に帰ったらチェックしてみようかなと思います。価格は数千円から数万円まで。とりあえず価格.com をチェック。


一眼レフ用の市販レンズ

ケンコー「スライドデジコピアDSLR」

一眼レフを使ったフィルム・スキャナのようなもので、その筋ではけっこう有名なもののようです。ただし、ホルダーにマイクロフィルムが挿入できなさそうという点はフィルム・スキャナと同様。改造ができればいいけれど。


デジタル・カメラでフィルム・スキャナを自作

デジタル・カメラでフィルム・スキャナを自作している方がいます。うーむ、すごいですね。実際まじでカッコいいです。カメの餌の容器を使っているところがこのうえなくオシャレです。自分でもちょっと作ってみたくなります。


スタンドを使って接写

ふつうに紙を複写するのと同じ要領で、三脚かコピー・スタンドを使って接写してしまいましょうという方法。安上がりかつお手軽。マイクロフィルムは二値のものが多いので、これくらいのお手軽なやりかたで十分なんじゃないかとも思います。


参考になるのは、一部でちょっと話題になったらしい日経トレンディネットの過去の記事。記事どうしのリンクがよくわからないかんじになっているので、一連の記事へのリンクをここに貼っておきます。


まとめ

デジタル・カメラを使って撮影してしまうのがいちばんお手軽でしかも高速でできそうだというのが小原くんの結論です。小原くん曰く、150万円以上するような専用のマイクロフィルム・スキャナと比べてもデジタル・カメラのほうが高速でいけるとのこと。


小原くんは、複写台使用+自作マイクロフィルム巻取り器という組み合わせで行こうとしているようです。工夫のしどころはつぎのようなかんじでしょうか。

  • 下から均一に照明を当てる。蛍光灯に乳白色のフィルターがついたビュアーのようなものが理想
  • 画面がきちんとフィットする角度にフィルムと複写台を固定する
  • 一定角度が保てるようにフィルムのガイドを調整する


市販のマイクロフィルム・リーダーのように、フィルムの上にガラス板を置いたほうがいいのかどうかはよくわかりません。フィルムはしわになったりしないので、なんであのガラス板が必要なのかわたしにはちょっとよくわかってないのです。たわむからかな。


あとは、マイクロフィルムがネガ・フィルムだった場合に、画像編集ソフトで反転させたいわけですが、それを一括処理する方法でしょうか。Photo Shop とか GIMP とか使えばすぐできるとは思いますが、まだ調べてません。


とまあ、こんなかんじで工夫していくことになるんでしょうけど、初期費用さえあれば比較的簡単に自動化できるはずのマイクロフィルムのスキャンを、時間をかけて手作業でやる気にはどうもならないので、わたし自身はあまり情熱がわかないというのが正直なところです。もちろんファンドさえあれば、よろこんで自動処理でガッとやらせていただきたいですが。


デジタル・カメラで文書を複写する 1
デジタル・カメラで文書を複写する 2
デジタル・カメラで文書を複写する 3 ←三脚/スタンドが使えない場合
デジタル・カメラで文書を複写する 4 ― コピー・スタンド
デジタル・カメラで文書を複写する 5 ― コンパクト・デジタル・カメラの選びかた ←改訂中
デジタル・カメラで文書を複写する 6 ― 複写キットの見直し
デジタル・カメラで文書を複写する 7 ― アーム・三脚・複写台
デジタル・カメラで文書を複写する 8 ― アーム・三脚・複写台 2
デジタル・カメラで文書を複写する 9 ― 携帯用複写台
デジタル・カメラで文書を複写する 10 ― 携帯用複写台を自作 ←オススメ!!
デジタル・カメラで文書を複写する 11 ― 三脚で複写
デジタル・カメラで文書を複写する 12 ― マイクロフィルムのスキャン

*1:ただしちらほら入る意見は断りのないかぎりわたしのものですので、へんなことが書いてあっても小原くんには何の責任もありません