ドキュメント・スキャナ選びのかんたんなポイント


ドキュメント・スキャナの選びかたについて。個人の顧客がすっかり定着したようで、グーグルで検索かければレビューもたくさんでてくるので、いまさら言うこともあまりなさそうですが、わたしがかんがえるほんとに重要なポイントをかんたんに書いてみようと思います。エプソンの新製品が出るのでいい機会でしょう。長い説明はいいからポイントだけ知りたいというかたは、つぎをクリックしてください。


スキャン・スピードに関してはいろんなところで話題になっているので割愛します(スピードにはわたしはあまり興味ありません。お茶でも飲んで休んでいるときに勝手に機械が動いていてくれれば、ちょっとの時間差なんてどうでもいいのです。ほんとにスピードが必要なら高級機を検討するのです)。見るポイントは、取り込んだ画像のきれいさ、カラー・ドロップアウト機能の有無、重送検知機能の有無、これです。スピードなんて現行機種ならどれでも十分だし、ほんとのところあまり重要なポイントじゃないのです。

1. 取り込んだ画像のきれいさ


これが重要なのはいわずもがなでしょうか。画質のきれいさは、けっきょくはどんなセンサを使っているかで決まります。具体的に言うと、センサとしてCISを使っているものより、CCDを使っているもののほうがきれいにいくようです。選択するときには、このセンサの違いだけを見れば、このクラスのものに関しては十分なように思います。取り込んだ画像の比較をしているサイトもたくさんありますが(そしてそれはとっても参考になりますが)、本当にきれいなものを求めるなら高級機を使うしかないのです。

2. カラー・ドロップアウト


これも、読み取り精度に関係します。書き込みがあるとOCRの認識率はガクンと下がります。しかし、書き込みが特定の色でされている場合は、それをドロップする機能がついているものがあります。この点に関しては、以前のエントリで書いたことがあります(書類や本への書き込みについて)。ScanSnapファンのひとはあまり気にしてないようですが(ScanSnapにはついていない)、本に書き込みをよくするわたしにとってはこの機能はぜひほしいところです。

3. 重送検知機能


ドキュメント・スキャナは自動給紙装置で紙を送ります。しかし、ローラーの摩耗や湿気などで、紙が2枚以上送られたりすることもあります。これは、不満を言うひとも多いですが、たぶん今の技術ではしかたのないことなのでしょう。各社の機械どれでもこれはおきます。業務用のものではおきにくいようではありますが、ローラーが摩耗するとやはり頻繁におきます。なので、重送がおきたときに機械が止まってくれるような機能がついているとやはりいいのです。そうでなければ、取り込んだあとに枚数を確認するといった、とっても面倒な作業が必要になってしまいます。

比べてみる


それでは比べてみましょう。機種名にはその機械の仕様概要のURLへリンクがはってあります。

各社製品の比較表
メーカー 機種 センサ カラー・ドロップアウト 重送検知機能 その他
Epson GT-D1000 CCD あり なし ADF付きフラットベッド
Epson ES-D200 CCD あり なし Adobe Acrobat 9 付き
Fujitsu S1500 CCD なし あり TWAIN、ISIS非対応、Adobe Acrobat 9 付き
Fujitsu S1300 CIS なし なし TWAIN、ISIS非対応
Canon DR-2510C CIS あり あり Adobe Acrobat 9 付き
Canon DR-2010C CIS あり なし
Canon DR-150 CIS あり (「あり」のような「なし」のような) 重送検知は超音波検知ではなく「長さ検知」。けっこう検知しない。
Kokuyo NS-CA1W カラーLED&CIS ? ?
Kokuyo NS-CA2 CIS ? ? A3対応(折らなくてもよい)


このように見ると、カラー・ドロップアウトと重送検知がふたつともそろっているのは、キャノンしかないということになります。しかし、キャノンはセンサがCIS。CCDを使っている富士通は、おしいことにカラー・ドロップアウトがありません。エプソンの新機種ES-D200もCCDですが、こちらは重送検知機能がない。ES-D200については、きのうヨドバシカメラの新宿西口本店で確認していただいたので、重送検知機能がないということは確かなようです。(スキャナ売り場の眼鏡をかけた女性の店員さんにとても丁寧な説明をしていただきました。ありがとうございます)。コクヨはカラー・ドロップアウトや重送検知の機能がついているかどうかは、ウェブ上の仕様概要を見るかぎりではわかりませんでした。


いまのところ、センサ、カラー・ドロップアウト、重送検知のどれかひとつをがまんする、という選択をしなければなりません。技術的にはそんなに難しくないでしょうから、こんなトレードオフはどうにかしていただきたいと切に思いますが、とりあえず現行では選択しなければなりません。(以下の選択のためのオススメを書くときに、コクヨ製品については情報が十分でなかったので言及していません)。


選択のポイント

図版がたいせつ+資料に書き込みはしない+大量にスキャンする
あなたは富士通S1500向きのひとです。マンガなどを大量スキャンするならこれですね。しかし、書き込みをした資料などについてカラー・ドロップアウトをすることはできません。いわゆる自炊職人向け。
図版がたいせつ+資料に書き込みする+大量スキャンはしない
エプソンGT-D1000かES-D200のどちらでも良いかも。会議資料など少量の文書について、書き込みをドロップアウトしたいという向きにはいいかもしれません。GT-D1000は値段も下がってるしフラットベッドもついている(というか、フラットベッドにADFがついている)タイプなのでお得感はありますね。でもフラットベッドがいらないなら邪魔かも。解像度が高い。しかし、スキャンしたあとに重送がないか枚数を数えて確認する必要あり。
文字中心+資料に書き込みする+大量スキャンする
キャノンDR-2510Cはあなたのためにあります。DR-150も速度などを気にしないのであれば選択肢に入りましょう。絵の質をあまり気にしないのであれば、カラー・ドロップアウトと重送検知の両方の機能がついている点がいい。CCDのセンサを採用したものに画質が劣るとはいえ、OCRの読み取り精度に大きな差が出るくらい悪いわけではありません。文書に書き込みはしないしカラー・ドロップアウトなんていらない、というかたには富士通S1500がいいかもしれません。


ちなみに、わたしはガチガチの文字中心主義者なので、キャノンのDR-2510Cを2年前から使っています。そのころは、スキャンスナップには重送検知機能ついていなかったですから、わたしにとって実質上選択の余地はありませんでした。しかし、もうそろそろ後継機が出てもおかしくない頃なので、キャノンさんにはぜひCCDのセンサを採用し、最強マシンを作っていただきたいなと願っています。


上記以外の比較ポイントとしては、お持ちでない場合はアクロバット同梱かどうか、大量スキャンをする場合は読み取り速度はどうかなどがポイントとなります。ただし、速度に関してはコンピュータ自体の実力にもよるみたいですから、気になるようであればよく計算したほうがいいでしょう(わたしは全然気にならないので計算してませんが)。


あと、キャノンDR-150や富士通S1300など小型機の消耗品が比較的速くだめになるのでそのコストを気にするひともいますが、キャノンDR-2510Cや富士通S1500などの消耗品と比べた場合、1枚あたりのコストはそんなに大きいわけではないので、それほど気にするポイントではないように思います。むしろ、富士通S1300に関してはセンサがCISで重送検知機能がついていない点がS1500と比べて大きく違う点です。キャノン製品については、読み取り速度以外にはふたつの機種でおおきな違いはなさそうですね(アクロバット同梱の有無には注意)。DR-150もよさそうだと個人的には思います。


〔追記:キャノンDR-150の「重送検知」は、仕様書に「重送検知(長さ検知)」とあるのですが、このエントリを書いたときにはこの意味がわかっていませんでした。これは、紙が重なって送られ、しかも5cm以上ずれたときに、その長さが規格と異なるので検知する、というものです。よほどローラーが摩耗しないとそこまでずれないと思うので、はっきりいって意味のない機能だと思いました。わたしは使ってみたところ、70枚中4枚が重送をおこし、しかも検知されませんでした。「長さ検知」というのはキャノンの用語であって、標準規格でもなんでもないので、どこかに説明があるべきですが、キャノンのウェブサイトで検索をかけてもその説明は出てこず、製品の同梱ソフトウェアの表示ではじめて説明されるということになっています。情報がウェブ上にないので、買うまでこのことがわかりません。購入を検討されているひとは、その点お気をつけなさるといいと思います。キャノン製品では、超音波検知機能がついている機種はしっかりと機能します。機種の一覧はこちら。DR-150の情報の提示がおそまつでびっくりしますが、DR-2510のほうはいい機械だとわたしは思います。〕

現行機種一覧

EPSON スキャナー GT-D1000 (フラットベッド/A4/1200dpi/ADF)

EPSON スキャナー GT-D1000 (フラットベッド/A4/1200dpi/ADF)

FUJITSU ScanSnap S1500 FI-S1500

FUJITSU ScanSnap S1500 FI-S1500

FUJITSU ScanSnap S1300 FI-S1300

FUJITSU ScanSnap S1300 FI-S1300

コクヨS&T NS-CA1W さくっとファイリング by Caminacs

コクヨS&T NS-CA1W さくっとファイリング by Caminacs


最後に蛇足。お仕事で使うのであれば、上位機種のほうがいいに決まっています。個人向けのこのあたりのクラスを複数購入することを考えるなら、上位機種をドンと買うなりリースするなりしたほうが、質もコストパフォーマンスもいいのではないかと思います。