出版社、著者、図書館、アーカイヴ〜本という「場」の管理人?

マガジン航』にのっていた、ボブ・スタインの「メモ」がとってもおもしろいのでここに記します。


ネットワーク時代における出版の統一場理論
本のための綺麗で明るい場所

オリジナルによると、「統一場理論」が2008年9月の記事、「綺麗で明るい場所」が2009年9月の記事ということです。著者のボブ・スタインは、アメリカのマルチメディアCD-Romのパイオニア的出版社Voyager Companyの創業者のひとり、シンクタンクThe Institute for the Future of the Bookの創設者のひとりということです。

非常に刺激的な「メモ」ふたつです。「本とは、そこに読者が(ときには著者が)集うことができる場所のことである」という洞察から、著者の役割の考察にうつるところはまさに白眉。著者というのは、紙の時代には「将来の読者のために特定の主題にかかわる人」という役割を期待されていたが、本がネットワーク上におかれるようになると「主題の文脈に沿って読者とかかわる人」になるという。

また、アマゾンやアップルをパイオニアとしてではなく、印刷本の終焉の時代である現在特有の保守的な存在と位置づけているところも興味深い。「アマゾンは、一人の読者によって読まれる印刷本という、いまなお優勢な読書のモードを支えているのと同じDNAの産物である」。


「作品」という概念を、紙面の余白で行われている活動までふくめたものへと拡張するならば、「コンテンツ」という概念もまた、作品のテキストが生みだす会話までを含めたものとして、再定義されなければならない。

「電子出版が成功するには、さまざまな形の本がネットワーク化されたもの、という発想を大きく越えたものにならなければならない」というわけなのです。「共通の関心をもつ活気あるコミュニティを作り出し、涵養する能力」をもつ出版社こそが成功するだろう。

となると、出版社という存在は、本という「場」の管理人のような存在になるということでしょうか。この「場の管理人」の役割を担うことができるのが、出版社なのか、著者なのか、はたまた図書館やアーカイヴなのか、それはこれから見ものだと思います。スタインは、出版社のブランド価値が鍵になるとかんがえているようです。いずれにせよ、信頼できる制度をつくっていくために、具体的な「実行可能な経済モデル」をつくっていくというのが課題だということでしょう。