デジタル・カメラで文書を複写する 1

今回から数回のお話は、カメラで紙媒体の資料を記録するための Tips です。きっと歴史研究をしたいひと以外にも、ビジネスでつかう資料をデジカメ保存するためのコツを知りたいというようなひとにとっても、役にたつのではないかと思います*1


デジタル・カメラ(デジカメ)が一般的になってからというもの、文書館に行って資料をカメラで複写*2するということは、歴史研究をする者にとってごく日常的な作業になってきました。


ところが、限られた時間の中で確実に複写をおこなわなければならないのに、案外と文書館や図書館の中は暗いもので、シャッタースピードが遅くてブレてしまったりということがしょっちゅうあります。特に、それが海外の文書館だったりした日には、日本に帰って「さあ腰を据えて読むぞ!」というときに、全然読めなくてあら残念ということになったりするわけです。


これを避けるためには、その文書館・図書館を去る前に、パソコンにデータを移して大きな画面で全チェックをおこなうべきだというのは言うまでもありません。しかし、撮影画像の出来にあまりにもバラつきがあったら?一日中ホコリっぽい文書の前に立ちっぱなしで撮影をつづけていたら、その日の終わりには気分はそれどころじゃありませんよね。あるいは、とんでもない宝の山を見つけてしまい、閉館時間めいっぱいまで撮影をしたかったとしたら?だいたいそんなときに冷静に画像チェックなんてする気分にはなれません。


できるなら、少なくともコピー機で複写するのと同じくらいの確実さで、カメラでも複写したいわけです。ならばどうするか?


できればこうしたい、という方法のまとめ


複写を確実にやるこつをたずねたときによくうけるのは、つぎのようなアドヴァイスです。

  • 三脚あるいはコピー・スタンド(複写台)をつかう。
  • ケーブル・レリーズを使う。
  • 無反射ガラスを資料の上に置く(紙のシワで明暗ができるのを防ぐため)。
  • レフ板を使う。
  • 光は斜め45度から当てる。

参考サイトのまとめ。ぜひご覧ください。勉強になります)。


三脚
三脚については、持っていないのでわたしはまったく詳しくありませんが、下向きに取り付け可能なものがよいそうです。このサイトを参考にしてください。ポールを下向きにつけられる三脚は、1万円前後からベルボンやスリックといった、有名なところのものを買えるようです。


コピー・スタンド
コピー・スタンドは重くて高価なものが多いですが、わたしがみたかぎりでは唯一つぎのようなものがありました。わたしの手にとどく範囲のお値段で、しかも携帯可能なサイズだったので、購入してしまいました(携帯可能なサイズのものは他には見当たりませんでした)。

ハクバ「デジカメ撮影スタンド」

これのレヴューはこのサイトにあります。

(なかには自作するひともいるようです。技術があるひとは試してみてはどうでしょうか)


無反射ガラス
四切り。いくつかサイズがありますが、いずれもさほど高価なものではありません。


その他
ハクバ「デジカメスタジオボックス 30」
(これもかなり心惹かれます)


ここまでやればかなりいいものが撮れるはずです。(ケーブル・レリーズについては次回以降にもっと詳しく紹介します)。


しかし出先や文書館では…


ところが、実際に出先や文書館・図書館でこれをおこなうとなると、たびたび困難にぶつかることになります。三脚やコピー・スタンドの持ちこみがはばかられるような文書館も多いですし、酸化してボロボロになった古い資料の上に無反射ガラスを置くのはちょっと難しい。光の調節なんてほとんど不可能なところが多いのではないでしょうか。


出先では、三脚やコピー・スタンドをどっしり据えるのはなかなか難しいわけですが、とはいえ手で構えると薄暗い文書館の中では、ほぼ確実にブレます。これはもはや宿命です。どうしたらいいのでしょうか。


そこで、これから何回かにわけて、三脚やコピー・スタンドのような機材を使うことなく、多少薄暗い屋内でもあるていど確実に資料を複写するための Tips をご紹介したいと思います。


ただし、撮影した文字を読めれば(そしてできれば OCR で認識できれば)それで十分という基準でやっており、美しい写真をとるためのテクニックの紹介はできません。また、わたし自身はまったくの我流で、撮影がうまいわけでもなんでもなく(むしろヘタです)、カメラに詳しいひとやプロの方からみたら、とんでもないことをしているのかもしれません。おかしなことを書いている場合は、ご指摘いただけるとたいへんうれしく思います。勉強させてください。


では、本題は次回から。


デジタル・カメラで文書を複写する 1
デジタル・カメラで文書を複写する 2
デジタル・カメラで文書を複写する 3 ←三脚/スタンドを使わない場合
デジタル・カメラで文書を複写する 4 ― コピー・スタンド
デジタル・カメラで文書を複写する 5 ― コンパクト・デジタル・カメラの選びかた ←改訂中
デジタル・カメラで文書を複写する 6 ― 複写キットの見直し
デジタル・カメラで文書を複写する 7 ― アーム・三脚・複写台
デジタル・カメラで文書を複写する 8 ― アーム・三脚・複写台 2
デジタル・カメラで文書を複写する 9 ― 携帯用複写台
デジタル・カメラで文書を複写する 10 ― 携帯用複写台を自作 ←オススメ!!
デジタル・カメラで文書を複写する 11 ― 三脚で複写

*1:ただし、最初にお断りしておくと、カメラで複写するよりも、スキャナを使ったほうが確実に速くきれいにスキャンできます。スキャナが使える状況のときにはそれを使うことをおすすめします。スキャナについてはまたいずれトリセツを書きます。

*2:紙媒体の資料を、カメラをつかって文字が読めるように撮影することを「複写」といいます。覚えておきましょう。日本のプロ意識の高いカメラ用品店に行ったときに、この用語を知らないと「ズブの素人」だと思われて、まともにとりあってもらえないことがあります(わたしがそうでした)。