デジタル・カメラで文書を複写する 3 ― 三脚/スタンドが使えない場合

sconvict2009-04-29


デジタル・カメラで文書を複写するための Tips。3回目です。今回は、わたしがとりあえず達した結論です。目標は、前回述べたとおり、いつでも携帯できるだけの大きさ・重さのものしか使わない。これです。


用意するもの


  1. コンパクト・デジカメ(ズーム機能付)
  2. ストラップ
  3. ケーブル・レリーズ
  4. 携帯レフ板
  5. カメラ・ホルダー
  6. その他(AC アダプタ、変圧器(海外で使用時)、予備の記憶媒体、予備の電池など)



説明:左方から、変圧器(雷サージプロテクタを付けている)、デジカメ用ACアダプタ、カメラ・ホルダー。ストラップを付けているカメラの左が予備の SD カード。(ケーブル・レリーズはこのときまだ手元に届いていませんでした。レフ板も作っていなかったので、代わりにノートで代用)。



1. コンパクト・デジカメ

いつでも携帯するので、コンパクト・デジカメを選びます。最低限の選ぶポイントは次のとおり(絵の美しさとかそういうことについてはあまりよくわかりません)。

光学ズーム機能付を選ぶ
作業する机などがどのような高さなのかわからないことが多いので、光学ズーム機能付にします(デジタル・ズームのものは、画像があれるのでダメです)。作業は立ちっぱなしのことがけっこう多いです。ズームができないと長時間かがんだまま作業することになりかねません。ただし、コンパクト・デジカメに一般的な沈胴式レンズ(普段はボディに入っていて撮影時に引き出すタイプのレンズ)は、ホコリが入りやすいそうなので、ブロアー(パフパフするやつ)とかを常時携帯してきれいにすることを心がけたほうがいいかもしれません。
セルフ・タイマーの機能で選ぶ
できればケーブル・レリーズを使いたいですが、どうしても手元にない場合は、2秒タイマーを使います。手ぶれはシャッターを切るときにおこりやすいので、シャッター・ボタンを押すタイミングとカメラが被写体を撮るタイミングをずらしてやるわけです(参考)。ただし、カメラの機種によっては、1枚撮るごとにセルフ・タイマー設定をしなければならないものと、一度設定したら変更するまでその設定が変わらないものとあります。当然、後者のほうが作業効率がよくなります。


わたしは、パナソニックLumix DMC-FX100 とリコーの R8 を使っています。Lumix のほうがファインダー部分など堅牢な作りになっていて現場向きだと思うのですが、セルフ・タイマーの設定を1枚ごとにしなければならない点が、わたしの用途には合いません。そのようなわけで、普段は R8 を持ち歩いています。


なお、リコーの売りのひとつになっている、「1cm 接写可能」という機能が、文書の複写に向いているのではないかと購入したときには思ったのですが、実際はそんな接写をする機会はほとんどないので関係ありません。ページ全体あるいは時間のないときは見開きで撮影するので、ある程度の距離をとることになるからです。



2. ストラップ

首にかけたストラップをピンと張ってカメラを固定します。なので、適当な長さがあるものを選びます。首にずっと密着するので、自分にとって気持ちの悪くない素材のものにしましょう。

わたしは、成田空港で売っていた、和柄の木綿のストラップを使っています。デザインもかっこいいし、長時間肌についていても違和感がないし、汗をかいても洗えるので、とてもよかったと思います。



3. ケーブル・レリーズ

手ブレを防ぐために、ぜひとも用意したいのが、ケーブル・レリーズです。

今回のキモのひとつです。コンデジにつけるには、アダプタを用意する必要があります。市販されているものでは、バンドで留めるタイプと、三脚用の裏のねじ穴に固定するタイプとあるようです。前者のほうが安価(1000円前後)なようですが、バンドが設定ボタンや裏のねじ穴を覆ってしまう可能性があるので、後者のほうが汎用性は高いです。後者は4000〜6000円ほどで購入できます。わたしはエツミのレリーズブラケットを購入しました。通販で 4500 円くらいで買えました。レリーズ自体がついていてお得なかんじです。


〔追記〕エツミのレリーズブラケットは、カメラの底との接触面にゴムの滑り止めがついていますが、それを固定するのに使われている接着剤が熱でかなり溶けます。ベタベタして気持ち悪いです。ぜひ改良を期待したいところです。その他の点では非常に満足しています。



レリーズがぶらぶらしないように、シリコンのクリップで留めてみました(〔追記〕クリップで固定するとシャッターをきったときの振動が伝わってブレることがあるので固定するのはやめました)。(写真は、コピー・スタンドに取り付けたところなので、多少様子が違います)。


レリーズのアダプタを購入するときには、それをつけていても三脚取り付け可能なタイプのものを選びましょう。そうでないと、カメラ・ホルダーやコピー・スタンドや三脚に取り付けられなくなってしまいます。


自作する方たちもいるようです(こことかここ)。日本に帰って時間ができたら、休日に工作してみたいです。


レリーズ関係のサイトを集めてみたので、参考にしてください(ここ)。



4. 携帯レフ板

窓際で撮影するときなど、照明が一方からきているときには、レフ板で陰影を軽減することができます(参考)。携帯用のレフ板は市販もされていますが、安く自作できるそうなので、自分で作ってかばんに入れておきたいものです。作り方を教えてくれる奇特な方々がいます。

100 円で作る人
100 円すらかけない人
手帳に仕込む人


わたしはといえば、100 円すらかけないという道を選びました。インドにいるのでアルミホイルしか手に入らなかったからなのですが、わざわざこれだけのためにアルミホイル1巻を買ったので、100 円以上かかってしまいました。これから作ります。


こんなかんじで使えばいいのかな(やり方間違っていたら教えてください)、と思います。まだレフ板を作っていないので、とりあえず大きめのノートで代用しました。うっかりレフ板を忘れてしまったときなどは、これでとりあえずは代用できるのではないかと思います。被写体の本は古くて壊れやすそうなものだったので、台を使って開ききらないようにし、片方のページずつ撮影しています。



5. カメラ・ホルダー

このアイテムが今回のもうひとつのキモです。ストラップで固定しても、必ず手は動きます。そこで、もう少ししっかりと固定するために、わたしは UN 社製のカメラホルダー 3 というものを使っています。使いかたについてはただいま試行錯誤中ですが、ストラップのみのときと比べるとかなり手ブレ防止ができます。


デジカメにストラップ、カメラ・ホルダー、ACアダプタを装着したところ。本当はこれにレリーズも装着したい。


使い方は、

  1. アームを曲げて胸に当てる
  2. アームを伸ばして腰の骨盤に当てる
のどちらかになると思います。胸に当てたほうが使いやすい気がするのですが、呼吸や心臓の動きがどれほど影響するかというお話になります。腰の骨盤のほうが動かないような気もしますが、立ちっぱなしで作業を行なう場合は、自分の足が揺れてしまうことまでは止められないので、たいした違いはないのかもしれません。いずれにせよ、これくらいの動きが影響するのは、露出時間が 10 秒を切っているような、非常にシャッター・スピードが遅いときだと思います。


なお、腰に当てる場合は、腰に一脚用のベルトポーチ(こんなもの)を下げて、普通の一脚を固定するという方法もあるようです。釣竿の竿尻を腰に固定するための用具が釣具屋さんで売っているそうで、それで代用することもできるそうです。この方法でどの程度固定できるのかは、わたしはまだチェックしていないので知りません。


胸に当てて撮影するときの様子がこれです。見やすいように左手は外してありますが、実際は左手を使ってカメラを固定します。アーム部分を持ってもいいかもしれません。


6. その他

AC アダプタ
長時間撮影をするときは、電池の残量を気にしなくてすむように、カメラのACアダプタを持っているとよいと思います。自分のカメラで使えるものを探してください。海外で使うときは、プラグの形状が違ったりするので、変換プラグを忘れないようにしましょう。


予備の電池
AC アダプタを使うための電源が作業場近くにない場合は、予備の電池と充電器を持っていくと、ひとつを使っているあいだにもうひとつを充電できます。


予備の記憶媒体
パソコンを持参する場合は内臓/外付ハードディスク、持参しない場合は SD カードを数枚持っていると安心でしょう。他の媒体を検討してもみましたが、2008年の段階では SD カードが一番費用対効果がいいようでした。外付けハードディスクはデリケートですし、いくつかの SD カードに分散しておけば、どれかが壊れたときのダメージが少なくて済むので少し安心な気がします。


OA タップ
文書館では、他の利用者と電源の取り合いになることがしばしばです。仲良く作業するために、OA タップを持参するといい人だと思われます。また、パソコン、デジカメ用ACアダプタ、照明器具など、同時に複数電源が必要になるので、長時間作業する場合は持っていたほうがよいです。


変圧器
海外で日本製品をの使用する時には忘れるといたいです。忘れてしまうようなうっかりなひとはなかなかいないと思いますが。


照明器具
暗い部屋で作業をしなければならないときには、クリップライトあるいは軽いテーブル・ライトを持っていたほうがいいかもしれません。しかし、これは少しかさばります。


ブロワー
とくに、古い文書を扱うときは、酸化したり虫に食われたりしたあとの粉がどうしても舞いますし、手にもたくさんつきます。カメラとパソコンは常にきれいに保ちましょう。沈胴式のレンズに埃がはいると泣くことになります。


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おわりに

画像の出来は、元の文書の文字の大きさにも左右されますが、A4 サイズの紙に 10pt ほどの大きさで印字してあるローマ字の文書(上の写真に写っているような文書)に関しては、次のような手ごたえを得ています。


露出時間
1/50 秒前後であればほぼ確実に OCR 読み取り可能なレヴェルの画像が撮影できるようです(もうちょっとがんばれるかもしれません)。それより露出時間が長くなると、呼吸や心臓の動きによるかすかな揺れが影響してしまうことがあるようです。そのようなときは、光源を用意するか、コピースタンドや三脚を使用する、あるいはその両方ということにならざるをえないのでしょう。


感度
ISO 400 までが実用的で、それより大きな数字になると荒すぎて OCR で読み取れないようです。


素数
今後のデジタル・メディアの大容量化を見越して、なるべく大きく精細に撮影するという方針をとり、カメラの能力最大(R8 の場合、3648×2736 ピクセル)で撮影しています。


以上が、当面のわたしの「お手軽複写セット」の結論です。当面はこれで試行錯誤を繰り返してみようと思います。レリーズを使うのと2秒タイマーを使うのとどちらが確実か、とか。



デジタル・カメラで文書を複写する 1
デジタル・カメラで文書を複写する 2
デジタル・カメラで文書を複写する 3 ←三脚/スタンドが使えない場合
デジタル・カメラで文書を複写する 4 ― コピー・スタンド
デジタル・カメラで文書を複写する 5 ― コンパクト・デジタル・カメラの選びかた ←改訂中
デジタル・カメラで文書を複写する 6 ― 複写キットの見直し
デジタル・カメラで文書を複写する 7 ― アーム・三脚・複写台
デジタル・カメラで文書を複写する 8 ― アーム・三脚・複写台 2
デジタル・カメラで文書を複写する 9 ― 携帯用複写台
デジタル・カメラで文書を複写する 10 ― 携帯用複写台を自作 ←オススメ!!
デジタル・カメラで文書を複写する 11 ― 三脚で複写